噎せ返るような緑の中を、貫く鉄路。 今回の風景は、人里離れた山奥から、大自然の気配とともに、ご案内いたします。
この写真は、静岡県榛原郡川根本町、接岨峡を望む展望台から、 関の沢鉄橋方面の風景を切り取ったものです。 南アルプスの心臓部を流れ下る大河川、大井川。 源流は、日本第4位の高峰、南アルプスの間ノ岳付近で、 静岡県内を、北から南に流れ下っています。 大井川は、最下流こそ、東海道新幹線や高速道路も通って発展した市街地となっていますが、 中流から上流部分への交通アクセスは非常に悪く、 自家用車でも、一般的に立ち入ることができるのは、中流域にある、畑薙第一ダム付近まで。 そこから先は、ある程度練度のある、登山者たちのみに許された世界が広がります。 しかし、そもそも畑薙第一ダムまでたどり着くだけでも相当なドライブが必要であり、 静岡市方面からのアプローチであれば、隣の川筋である安倍川方面からの山越えで、 新東名新静岡ICから、おそらく60km程度は進まなければなりません。 大井川を直接遡る場合には、長島ダムの先、接岨峡までは広い道路が整備されていますが、 その先、静岡方面からの県道と合流する井川ダムまでの区間で、 一部、非常に狭い林道を進まなければならず、直接、井川ダム以北に行く場合には、 静岡市方面からが無難なようです。
さて、大井川沿いには、SLで有名な大井川鐵道が通じています。 大井川鐵道路線は、JRとの乗換駅、金谷駅から千頭駅までと、 その先、井川までの2区間に大きく別れ、奥地を走る井川線には、 アプト式のミニ列車が走ります。 写真の関の沢鉄橋は、その見せ場の1つで、 大井川の支流、関の沢川をまたぐアーチ橋。 鉄橋を眺める展望台は、接岨峡温泉がある集落から、旧林道を少し入ったところにあります。 ネットで見つけた案内図に従って進みましたが、非常に狭い林道には人の気配は全くなく、 道に落ちた枝や落石をよけながら進む状況で、道を間違えたのではないかと不安になるほど。 列車が通る時間帯には、鉄道カメラマンで賑わうのかもしれませんが、 訪れたこの日は、そんな賑わいは一切ありませんでした。 小さな東屋が整備された展望台では、スズメバチやアブなどが縦横無尽に飛び交い、 奥深い、そして懐深い大自然の気配が、周りから迫ってくるようでした。
頂いたご感想などにつきまして、個別のフィードバックは基本的に行いませんが、 今後の製作の糧に、また今後の写真選択の参考にさせていただきたいと思います。